またまた激烈毒ジタ系。

……につき、ご注意。


最近(『サジュエと魔法の本』以来)、やや児童書チックなファンタジィに傾いてたので、高里椎奈『孤狼と月 フェンネル大陸 偽王伝』孤狼と月 フェンネル大陸 偽王伝 (講談社ノベルス)
に手を出してみる。
2巻目が出たし、そっちを社販で、1巻目は現金買いで。




……叫んでいいですか。
失敗したー!!
『サジュエ〜』の方が面白かったよ、マジ。
つぅか、この作家、言葉の使い方に無神経ですね!
普通さぁ、“大尉”とか“将軍”とかって言葉には、ある種のイメージが伴ってるじゃないですか。ぶっちゃけ、これを使ったら、近代以降の軍組織だぞ(フランス革命の時には、既に使われてたから、多分ロココ以降だと思うんですが)、みたいな。で、“将軍”って云ったら、まぁ軍の上層部、はっきり云えば一個師団以上の軍隊の指揮官であるとかね、江戸の将軍だって、そういう意味では(役職上は)「天皇の軍の一部を任された武官」という位置づけなんだし。
それがさぁ、何で「王族のややお飾り的呼称」になるのよ! そんなの、“将軍”って言葉から導き出しようがねぇよ!
同じようなのに“蔀”ってのがあって、これ若い人にはわかんないだろうなぁ、あの、板を上から釣ったみたいな窓のこと。平安もの読むとよく出てきます。でも、それがわかる人的にはやや違和感だろうし、わかんない人は――わかんないよね! どんなもんだかなんて!




あと、そういう(近代軍組織的)呼称の使用されている世界で、何で戦場の大型兵器が投石器だよ!? つぅか、この世界、石炭船(ってことは、化石燃料を使った動力機関があるってことだよね)とか存在してるんですが。それで、まぁグール云々は激しく置いといて(でも、あんま置いとけないけどね!)も、鉄砲もないんだ、ふ〜ん(ちなみに、日本史の記憶を手繰っていただければおわかりの通り、船が帆船しかなかった時代――しかし、それはフランス革命のころだって限りなくそうだ――に、既に火縄銃が存在してました。例の“種子島”ですね)。大砲だってあったんだよなぁ、16世紀の話ですが。
で、それで13歳の、王族とは云え、子供に作戦立てさせて(戦国時代でも、12歳くらいで初陣でしたが、大名の子弟にはちゃんと軍師がついてたよ)、それがそのまま通っちゃうってさ――よしんば戦略の大天才だったとしても、それならキャラ的にもっと鋭さが必要だよねと思いました。
つかさ、王女が駆け落ちして市井に暮らしてるのは構わないんだけど、王宮と市街地の違いが感じ取れないんですが。それに平屋の王宮って――ヴァイキングの長の家レベルでしか想像がつきません。
つぅか、何もかもファンタジィとしてアウトなんだけど!!




つぅか、ぶちゃけ、この作者の世界観(世界造型という意味でなく、世界の把握の仕方という意味での)が見えない、つぅか、あの、この世の中がどういうシステムで動いてるか、わかってる!? って気分にさせられるんですが。
行政の仕組みとか、物流の流れとか、あるいは政治の駆け引きとか、ちっともわかってないんじゃないのかなぁ。
一から世界を創造するって云うのは、基本的に不可能だと思うのです。独創的な部分がある作品世界にしても、大部分は現実の延長ですよ。いいファンタジィって、基本的にそうでしょう? 『グイン・サーガ』とか、『はてしない物語』とか、多分『指輪』とかもそうだと思う。“あり得ない部分”を支えるための、異常なまでにしっかりした基盤――それを支えるのは、結局は現実の世界と地続きの部分なのですよね。
この話には、決定的にそれが欠けている。
現ノベ担・ゾエコが「売れない」と云ってましたが、当たり前だよ!! 納得できないもん、主人公の幼さ(あまりにもものを知らなさ過ぎる!)や、世界の整合性のなさ、はっきり云えば、作者の社会的視野の乏しさが。
この話に較べれば、二流のライトノベルの方が、よっぽどよく出来てるよ。
キャラの心情をメインにするつもりなら、軍とか政治とかを出すべきじゃなかったね。フェン(主人公の女の子)は、軍の指揮官としては不適格だ。何も知らないで、民の窮状に涙するお姫様ならまだしも。




これで作者27歳(1976年12月生まれってこたぁなぁ)ってさぁ――高等教育受けたの? 新聞読んでる? ニュース見てる? って感じですか? 私は、そっちを問いたい。
この人は、ファンタジィを書けるほどの教養もないし、それを誤魔化せるほどの力量もない。
それで、こんなファンタジィ崩れを平然と書いてしまるのも問題だが、それをチェックできない編集は、もっと問題だ。
私は、実はわりと講ノベの編集は大丈夫なのだと思っていた(徳間とか中公より)のですが、今回、それが激しく誤りだったと痛感いたしました。
ダメだ、講ノベ!! 『ファウスト』とかの好調さにうつつ抜かしてる場合じゃないぞ! ヤバい、ヤバいよ!!




……あああ、語り足りないけど、長くなったので第一部完。
続きは2巻目を読んだ後で。
スカーレット・ウィザード』が可愛く見える小説って、一体……